製造業の現場では、錆、グリース、防錆油、切削油などの汚れを除去するために、様々な洗浄剤が使用されています。洗浄剤を大きく2種類に分類すると溶剤系洗浄剤と水溶性洗浄剤がありますが、水溶性洗浄剤は液性によって酸性、中性、アルカリ性の3種類に分類され、それぞれ異なる特性と用途を持っています。

 

酸性・アルカリ性の基本原理

まず、酸性やアルカリ性といった性質が、何によってもたらされているのかを明らかにしておきましょう。水溶液の酸性・アルカリ性は、水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)のバランスによって決まります。H+は酸性を示すイオン、OH-はアルカリ性を示すイオンです。

水の化学式はH2Oと表されますが、水中に存在する水分子をよく見てみると、実は以下のような反応を起こしています。

よく見る化学反応と異なり、矢印が両方向に向かっているのは、この反応が左から右にも、右から左にも両方向に進むため、水中における水分子は常にH2Oとして存在しているのではなく、絶えずH+とOH-に分かれたり、逆にその2つが結合してH2Oに戻ったりしているのです。

そのため、ある瞬間だけを切り取って水をミクロの眼で見てみると、H2O以外にもH+とOH-が存在するということになります。

さて、上に示した式では、H+とOHが同じ数だけ発生することになります。この状態は、酸性を示すもとになるイオンとアルカリ性を示すもとになるイオンが同じ量だけ存在しているわけですから、酸性でもアルカリ性でもなく、中性を示すことになります。

逆に、酸性の溶液はH+の濃度が高く、アルカリ性の溶液はOHの濃度が高い状態にあるということになります。

イオンバランス

酸性: H+濃度が高い
中性: H+とOH-が同量
アルカリ性: OH-濃度が高い

pHとは何か?

酸やアルカリの強さを表す指標としてよく使われるのがpHです。pHは、日本語では「水素イオン指数」と訳され、水溶液中に存在する酸性の元であるH+の濃度を表す指数です。詳しい説明は省きますが、中性の水溶液に含まれるH+の濃度はpHで表すと7に該当します。

pHは7を基準に、水溶液の酸性が強まれば強まるほど小さくなり、逆にアルカリ性が強まれば強まるほど大きくなります。

pH Scale Examples

pHはH+の濃度を指数化したものであるため、酸の濃度が非常に高い水溶液では、pHが0になったり、マイナスになったりすることもあります(日常生活で、そういった強力な酸に遭遇することは滅多にないと思いますが)。

それでは、洗浄剤の液性によって、洗浄剤の性能にどのような違いが出てくるのでしょうか?

酸性洗浄剤の特徴と用途

酸性洗浄剤が効果を発揮するのは、主に以下のような汚れを除去するときです。:

  • 金属に発生した錆
  • 配管内に堆積したスケール
  • コンクリートおよびモルタル
  • トイレに付着した尿石

しかし、酸性洗浄剤にはデメリットもあるため、それらを理解したうえで使用することが重要です。

酸性洗浄剤のデメリット

酸性洗浄剤のデメリットは、金属を錆びさせてしまうことです。酸は錆を除去するのに役立ちますが、洗浄後に酸の成分が残ってしまうと、その成分が錆の発生を促進してしまいます。そのため、酸を使用して錆の除去を行った後は、酸をよく洗い流す必要があります。また、錆の除去後は金属の地肌が露出し、錆びやすい状態になるため、塗料などによる保護が必要になります。

また、配管内に堆積したスケールの除去に酸を用いる場合は、更なる注意が必要となります。配管内を効率的に洗浄するためには、pHが十分に低い状態を保ちながら洗浄液を循環させることが重要です。そのため、洗浄後はpHの低い廃液が大量に発生することになります。

しかし、この廃液処理が非常に厄介で、廃液を薄めて酸を和らげるには、大量の水が必要となります。例えば、pH = 1の廃液を水で薄めて、中性付近のpH = 6にするには、廃液を約100,000倍にまで薄める必要が生じるのです。このように、廃液を薄めて処理することは現実的ではないため、専用の薬品による中和処理を行うことが必要になります。酸を使った配管洗浄は通常のメンテナンス作業よりも大規模な仕事になるため、周囲への影響を抑え、廃液も最小限の量で済むよう、綿密な事前準備のもとに実施することが重要です。

アルカリ性洗浄剤の使いどころ

アルカリ性洗浄剤が効果を発揮するのは、主に以下のような汚れを除去するときです:

  • オイルやグリースなどの汚れ
  • キッチンや食品工場の油脂汚れ
  • パイプに詰まった髪の毛などのタンパク質
  • 熱交換器のアルミフィンに付着した汚れ

上記のうちオイルやグリース、油脂の汚れを除去する場合は中性洗浄剤や溶剤系洗浄剤も代用できますが、タンパク質を溶解させたい場合はアルカリ性洗浄剤を選ぶ必要があります。

アルカリ性洗浄剤のデメリット

酸性洗浄剤が錆の原因となりやすいのに対して、アルカリ性洗浄剤は錆の原因となりにくいのが特徴です。それでは、アルカリ性洗浄剤のデメリットは何でしょうか?それには、先ほど述べた、アルカリ性洗浄剤がタンパク質に与える影響が関わってきます。

タンパク質を溶かす作用はアルカリの大きな特徴の一つです。身近な例を挙げると、台所用の漂白剤をうっかり触ってしまったときに触った箇所がぬるぬるしてくるのは、皮膚表面のタンパク質が溶解しているからです。そのため、アルカリ性洗浄剤を適切な保護具なしに使うと、手荒れや最悪の場合失明などのリスクが発生します。

もちろん、アルカリ性洗浄剤に限らず多くのケミカル品にも同じことが言えるのですが、アルカリは酸と比較して危険性の認知度が低く、臭いもきつくないものが多いため、安全上の注意がおろそかになりやすい傾向があるように思います。

また、酸性洗浄剤と同様に、大量に使用する場合は廃液の問題も考える必要があります。アルミはアルカリに溶解するため、空調用アルミフィンの洗浄にはアルカリ性の洗浄剤が用いられます。この作業には大量の廃液が伴うため、配管の酸洗浄と同様に綿密な事前準備が必要となります。

 

まとめ

今回の記事では、「酸とアルカリ」という点に注目して、洗浄剤の特徴をまとめました。酸性洗浄剤とアルカリ性洗浄剤のそれぞれにメリットとデメリットがあり、特性を理解したうえで使い分けていくことの重要性がお分かりいただけたかと思います。

NCHは、お客様が抱えるメンテナンス関連の問題に最適なソリューションをご提案いたします。

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